最先端技術で港を“スマート化”:深セン港の取り組み
深セン港の概要
中国南部に位置する深セン港は、年間およそ3000万個のコンテナを取り扱う世界第4位の港です。その一部であるマー湾港は、1990年に開港し、7年前からスマート化を進めています。この取り組みは、最先端技術を活用して港の効率化と労働環境の改善を図るものです。
スマート化の具体例
自動運転トレーラー
マー湾港では、自動運転トレーラーがコンテナを運んでいます。これらのトレーラーには、5G回線と北斗衛星システムが活用されており、正確な位置情報をリアルタイムで取得しながら運行します。万が一の事態に備えて、遠隔でスタッフが監視していますが、実際に介入するのはわずか2%にとどまります。既存の車体を改造して使用することで、コストも節約されています。
自動化の進展
現在、港内でコンテナ運搬を担うトレーラーの約5分の1にあたる38台が自動運転で運用されています。さらに、船との積み下ろしを行う高さ50メートルの大型クレーンや、コンテナヤード内を移動させるクレーンはほぼ全て無人で運用されています。これにより、72台のクレーンをわずかなスタッフで管理することが可能となり、かつては24時間体制でクレーンに人が乗り込む過酷な仕事から解放され、労働環境が大幅に改善されました。
コンテナターミナルゲートのスマート化
「コンテナターミナルゲート」は、海外へ輸出するコンテナを搬入する港の玄関口です。以前はドライバーが書類手続きを行っていましたが、現在はスタッフがコンテナの損傷状況をチェックするだけで済みます。手続きはすべてオンラインで進められるため、ドライバーはスマートフォンのアプリの指示に従ってコンテナを届けるだけで済みます。
コンテナ管理の効率化
コンテナの管理もスマート化されています。以前はコンテナが港内を移動するたびにスタッフが場所を手動で入力していましたが、現在は各所につけられたカメラで自動追跡が可能です。全ての貨物の所在を自動で把握することで、港の運営が効率化されています。
政府のスマート港政策
中国政府は2017年に、10年かけて港のスマート化を進める政策を発表しました。この政策の下で、深セン港を含む天津や上海など18の港がスマート化を完了しています。政府の支援を受けて、各港は最先端技術を導入し、運営効率の向上と労働環境の改善を実現しています。
スマート化の効果と展望
効率化とコスト削減
スマート化により、港の運営効率は飛躍的に向上し、コストも削減されています。自動運転トレーラーや無人クレーンの導入により、作業の迅速化と正確性が増し、人手不足の問題も解消されつつあります。
労働環境の改善
過酷な労働環境から解放され、スタッフの働きやすさが向上しました。これにより、従業員の満足度や安全性も高まっています。
国際競争力の強化
スマート港としての運営が進むことで、深セン港の国際競争力が強化され、中国全体の物流インフラの信頼性も向上しています。これにより、さらなる経済成長が期待されます。
結論
深セン港のスマート化は、最先端技術を駆使して港の運営効率と労働環境を大幅に改善する取り組みです。この成功事例は、他の港にも波及効果をもたらし、中国全体の物流インフラの進化に寄与しています。今後も、スマート化の進展によって、さらなる効率化とコスト削減が期待されます。