公正取引委員会、トヨタ子会社に下請法違反で勧告
はじめに
2022年から2023年3月までの間、トヨタ自動車の子会社であるトヨタカスタマイジング＆ディベロップメント（以下、トヨタC&D）が下請け企業に対し、不当な取引慣行を行っていたことが明らかになりました。これを受け、公正取引委員会は下請法違反でトヨタC&Dに再発防止の勧告を行いました。本記事では、この事件の詳細や背景、影響について詳しく解説します。
事件の概要
トヨタC&Dの違反行為
トヨタC&Dは、トヨタ自動車が90.5％の株を保有する子会社であり、部品の製造やカスタマイズを行っています。しかし、2022年から今年3月にかけて、下請け企業から受け取った部品について品質検査を行わず、不良品として不当に返品する行為を行っていました。この行為により、65社の下請け企業に約5400万円分の被害が発生しました。
無償での金型保管
さらに、トヨタC&Dは、自動車部品の大量生産に必要な金型を下請け企業に貸し出していましたが、そのうち49社に対して長期間部品の発注を行わないまま、無償で金型を保管させていました。このような行為は、下請け企業に不当な負担を強いるものです。
誤認識による説明
トヨタC&Dの現場担当者は、下請け企業に支払う費用の中に金型の保管費が含まれていると誤って認識していたと説明しています。しかし、これは単なる誤認識では済まされず、構造的な問題が背景にあると考えられます。
公正取引委員会の勧告
公正取引委員会は、トヨタC&Dの行為が下請法に違反していると判断し、再発防止の勧告を行いました。公正取引委員会は、メーカー側が下請け企業に負担を強いる古い慣習が背景にあると指摘しています。
金型保管をめぐる問題
自動車業界以外でも広がる問題
金型保管をめぐる違反は、自動車業界以外でも相次いでいます。例えば、昨年以降、金型保管に関する下請法違反の勧告は今回で5件目となっています。この問題は、車やスマートフォンの部品など、さまざまな製品の製造に関わる企業に影響を及ぼしています。
富士合成の事例
プラスチック製品の製造を手がける富士合成では、取引先の企業から金型を多数預かっています。これらの金型は、製品を作るために加熱した樹脂を流し込むために使用されますが、保管には手間がかかり、中が錆びないように手入れが必要です。富士合成は金型の保管料を請求していますが、支払いを断る企業も存在します。
専門家の見解
専門家は、金型をめぐる問題が企業同士の長年の関係の中であいまいにされてきた部分であると指摘しています。このような慣行が下請け企業にとって重荷となり、公正な取引環境を損なう原因となっていると考えられます。
まとめ
今回のトヨタC&Dに対する公正取引委員会の勧告は、下請け企業に対する不当な取引慣行の改善を求めるものです。金型保管をめぐる問題は、自動車業界のみならず、さまざまな製造業界に広がる課題であり、業界全体での意識改革が求められます。今後、メーカーと下請け企業の関係がより公正で透明性のあるものとなることを期待します。
