債券受給から占う長期金利の行方
債券市場の現状
債券市場の動向は、長期金利の行方を占う上で非常に重要です。東海東京証券の佐野一彦氏によると、2023年度における海外勢の動向が注目されています。海外勢は、2023年度に円債を大幅に買い越しており、その背景には二つの主要な要因が存在します。
YCCの柔軟化
まず一つ目の要因として挙げられるのは、イールドカーブコントロール(YCC)の柔軟化です。YCCは、日銀が長期金利の上限を一定に保つための政策であり、その柔軟化は市場において大きな影響を与えています。YCCの緩和により、海外勢が日本の債券市場に対して積極的な姿勢を見せたのです。
日米の短期金利差
二つ目の要因は、日米間の短期金利差です。アメリカの金利上昇が続く中で、日本の金利が比較的低水準にあることが、海外勢にとって日本の債券市場を魅力的な投資先としています。この短期金利差が、海外勢の円債買い越しを後押ししています。
国内勢の動向
国内勢についても、各業態ごとの動きが注目されます。2023年度において、信託銀行は最大の買い越し業態となりましたが、生保・損保の買い越し幅は縮小しました。
信託銀行
信託銀行は引き続き買い越しを続けており、その買い越し額は増加しているものの、今後はその勢いが減少する見込みです。
生保・損保
生保・損保は買い越し幅が縮小しているものの、今後は再び買い越し額が増加する見込みです。
都市銀行
都市銀行はこれまで売り越しの姿勢を見せていましたが、今後は買い越しに転じる可能性が高まっています。
日銀の動向
短期的な動き
短期的には、先週5月13日に円安対応として一部のゾーンの減額を実行しました。これが、現在の0.965%の利回り上昇の背景にあります。日銀の国債保有比率は約5割に達しており、これが市場における日銀の影響力を示しています。
長期金利の見通し
今後の長期金利の動向は、以下の要因によって左右されると考えられます。
海外勢の動向
海外勢の円債買い越し額がやや減少する見込みですが、その影響は限定的であると予想されます。
信託銀行と生保・損保の動向
信託銀行の買い越し額は減少する一方で、生保・損保の買い越し額は増加する見込みです。これが市場にどのような影響を与えるかが注目されます。