日本の長期金利上昇は「悪い金利上昇」なのか?
長期金利上昇の背景
谷栄一郎氏は、最近の日本の長期金利上昇が「悪い金利上昇」である可能性について詳しく解説しています。彼の分析によれば、日本と米国の10年金利はこれまでおおむね連動して動いてきました。しかし、現在では日本の金利が大きく上昇する一方、米国の金利はほぼ横ばいの状態が続いています。
日米の実質金利差の縮小
日米の10年実質金利差はかなり縮小していますが、この動きに反して円安が進行しています。通常、相対金利差の縮小は円安の抑止に寄与するはずですが、今回はそうなっていないのです。この現象について谷氏は、「リスクが背景にある金利上昇、リスクプレミアム主導の金利上昇」という特性が影響していると述べています。
リスクプレミアムと円安の関係
リスクプレミアムが高まると、通常は金利が上がりますが、その際には円高になることはなく、むしろ円安が進行します。谷氏は、日本銀行(以下、日銀)のイールドカーブコントロール(YCC)政策が、過去において金利の人為的な固定と財政リスクプレミアムの封殺を行ってきたことを指摘しています。
現在のリスクプレミアムの急上昇
現在の状況を考慮すると、悪性のリスクプレミアムが急上昇しているという懸念が浮上します。このため、今月の日銀の金融政策決定会合では、オペレーション(オペ)の減少が言われているものの、据え置きが妥当であるとの見解を示しています。
金利上昇の要因
日本の長期金利上昇にはいくつかの要因が考えられます。まず、国内のインフレ圧力の高まりがあります。エネルギー価格の上昇や円安の影響により、輸入物価が上昇し、それが国内の物価に波及しています。これにより、インフレ期待が高まり、長期金利が上昇しています。
また、財政リスクの高まりも一因です。政府の財政赤字が拡大し、国債の発行量が増加する中で、投資家は日本の財政健全性に対する懸念を抱いています。このため、リスクプレミアムが上昇し、長期金利が引き上げられています。
円安の影響
通常、金利上昇は通貨高をもたらしますが、今回は異なる動きを見せています。これは、金利上昇が経済の健全性を反映しているわけではなく、リスクプレミアムの上昇によるものであるためです。このような状況下では、投資家は安全資産としての円を避ける傾向が強まり、円安が進行するのです。
日銀の対応
谷氏は、現在の状況を踏まえた上で、日銀の金融政策の据え置きを提案しています。日銀がオペレーションを減少させることで、市場のリスクプレミアムを高めるリスクがあるため、現状維持が妥当であると考えられます。