「あたらないカキ」完全陸上養殖の展望と海洋深層水の活用
はじめに
沖縄県久米島は、その豊かな自然資源と先進的な技術を駆使して新たな水産養殖とエネルギー開発に取り組んでいます。特に、久米島で進められている「完全陸上養殖」による「あたらないカキ」の生産と、海洋深層水の多様な活用が注目されています。本記事では、久米島における水産養殖の現状、海洋深層水の特徴、そしてその応用について詳しく解説します。
久米島の水産養殖
クルマエビの養殖
久米島の名産であるクルマエビは、生産量が日本一を誇ります。このエビ養殖の成功の鍵は、海洋深層水の活用にあります。
- 深層水の特性:海洋深層水は、水温が低く、ウイルスや細菌が少ない上、栄養が豊富です。これにより、クルマエビの健康維持と成長が促進され、品質の高いエビが生産されています。
- 冷却効果:深層水を用いて水温を下げることで、エビを大人しくさせ、ストレスを軽減しています。これにより、エビの死亡率が低くなり、生産効率が向上しています。
海ブドウの養殖
海ブドウも、久米島の特産品として人気があります。夏場には、水温の上昇に対応するため、深層水が活用されています。
- 栄養補給:深層水にはミネラルや栄養分が豊富に含まれており、これが海ブドウの成長をサポートしています。
- 水温調整:水温の上昇を防ぐために深層水が用いられており、品質を維持するための重要な要素となっています。
あたらないカキの完全陸上養殖
ジーオー・ファームの取り組み
久米島での新たな挑戦として、ジーオー・ファームが10年間にわたって取り組んでいる「あたらないカキ」の完全陸上養殖があります。これは世界初の試みであり、食中毒のリスクを低減したカキの生産を目指しています。
- 深層水の利点:海洋深層水は、ウイルスや細菌をほとんど含まないため、食中毒のリスクを大幅に低減できます。これにより、安全性の高いカキが生産可能です。
- 養殖の課題:陸上養殖では、エサ代とエネルギーコストが課題となりますが、久米島の地域資源を活用することで、ランニングコストの軽減が図られています。具体的には、地元でのエサの供給や、自然エネルギーの利用が考えられます。
完全陸上養殖の利点
- 環境への影響の軽減:陸上での養殖は、海洋環境への影響を最小限に抑えます。海洋生態系を保護しつつ、高品質なカキを生産できます。
- 安定供給:天候や海洋環境に依存せず、安定的なカキの供給が可能です。これにより、供給の安定性と品質の均一性が確保されます。
海洋深層水の多様な活用
海洋深層水研究所
沖縄県海洋深層水研究所は、深層水の取水を行い、多方面での活用を進めています。久米島沖合2.3キロメートル、水深612メートルで取水される深層水は、日本最大の取水量を誇ります。
温度差発電
海洋温度差発電は、表層水と深層水の温度差を利用して発電を行う技術です。沖縄県の実証設備では、温かい表層水で特殊な液体を蒸気にし、タービンを回して発電しています。
- 発電の仕組み:蒸気がタービンを回して発電し、冷たい深層水で蒸気を液体に戻すことで、再び循環利用しています。
- 国内唯一の技術:この技術は国内唯一であり、世界中の70カ国以上から視察者が訪れています。
未来の発電所計画
商船三井が2022年からプロジェクトに参加し、2026年までに1メガワットの発電所の稼働を目指しています。この発電所は、表層水と深層水の温度差を利用した自然エネルギーの発電施設として、持続可能なエネルギー供給のモデルケースとなることが期待されています。
経済活性化への期待
久米島町の取り組み
久米島町は、深層水の活用を通じて地域経済の活性化を図る計画を描いています。
- インフラ整備:安定的な投資を呼び込むためには、取水管やその他のインフラ整備が不可欠です。これにより、深層水の安定供給と多目的利用が可能になります。
- 技術の確立と拡大:既存の技術を活用しつつ、新たな応用分野を開拓することで、地域経済の持続可能な発展が期待されます。
地域資源の活用
久米島の豊かな自然資源を活用することで、エネルギーコストの削減や、エコツーリズムの促進が進められています。
- 観光資源としての利用:深層水を利用した観光資源の開発や、エコツーリズムの推進により、地域経済の多角化が図られています。
- 地元企業の支援:地元の企業が深層水を利用した新たなビジネスモデルを構築することで、地域経済の強化が進められています。
まとめ
沖縄県久米島における「あたらないカキ」の完全陸上養殖と海洋深層水の多様な活用は、日本の水産業とエネルギー分野における革新的な取り組みです。深層水の活用により、安全で高品質な水産物の生産や、持続可能なエネルギー供給が実現されつつあります。今後も、地域資源を活用した経済活性化と技術革新が進むことで、久米島はさらに注目される存在となるでしょう。